第130章 ご飯は食べないわけにはいかない

「栞、危ない!」

長谷川明子がキッチンから出てきた瞬間、階段を下りていた娘の足がつるりと滑ったのが見えた。心臓が凍りつく。

寝不足でぼんやりしていた長谷川栞は、母の怒鳴り声で一気に意識が引き戻され、反射的に手すりへ手を伸ばした。指先が掴み、ぎりぎりで体勢を立て直す。

「大丈夫!? 大丈夫なの!? もう、どうしたのよこの子! 朝からそんなフラフラして……心臓止まるかと思ったじゃない!」

明子は慌てて階段を駆け上がり、栞の腕を支える。目には不安が濃く滲んでいた。

「……大丈夫だよ、ママ」

栞も今の危なさにぞっとしていた。あと二、三段とはいえ、転げ落ちればただでは済まない。けれど母を心...

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